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遠賀川 <土手の大銀杏> [保存]

今日は、或る川筋男のなんとも痛快なお話です。 遠賀川の土手を上り、この木の脇を通るたびに「よう頑張っとうね!」と思っていた大銀杏は、やはりただ者ではありませんでした。道のど真ん中にでんと構え、行き交う車がその下をすごすごと通らせていただく、これは自然と人間の本来の姿であろうか、とも思わせる威厳があります。

以下、この川筋男(失礼!これは敬称のつもりです)のご子息が書かれた文章を、ご了解を得て転載させていただきます。

◆わが家のすぐ裏の土手(遠賀川堤防)に、筑前植木のシンボルでもある大公孫樹(大銀杏樹)がある。私たちの幼少の頃にはこの大樹に梟が住みついていて夜な夜な ほうほう と不気味な声で鳴いていた。 ◆72歳にもなる末弟が2つ3つの頃、姉たちが「はよねらんと、トロスコトートが、はなくそ たべにくるバイ」と寝かされていたので、ずいぶん昔のことである。 ◆図鑑を見ると フオウフオウ と聞こえていたので、耳のある トラフスズク がほんとうであろう。 ◆現在は自動車ヘッドライトの為か、姿も鳴き声もしなくなり寂しく思われる。 ◆『星を抱き 寒がっている 大銀杏』 父はこの大銀杏を自分のことのように愛し、多くの絵や俳句の対象としたようです。

◆この大銀杏には、忘れることのできぬエピソードがある。 それは昭和28年6月26日のことで、バケツの水をひっくり返したような激しい大雨が続き、遠賀土手の「中の江」付近の堤防が決壊、一瞬のうちに部落や田畑をのみ込んで、その被害は遠賀平野一帯に及んだ。 ◆記憶にあるお方もありましょうが、各新聞はトップ記事として全国に報道したのである。 ◆私は消防団の一員として日夜奮闘していたので、そのときの様相はハッキリと記憶している。 ◆その後、大雨は何回となく襲いかかり、植木の街は右往左往の大混乱に陥っているとき、大銀杏の茂りは交通の邪魔にもなり、樹の根が地盤を緩めるということで、建設省遠賀川工事事務所堤防上の樹木はすべて伐採する計画で動き出した。

 

◆現にすぐ裏の大櫻は伐り倒され、これを知った父は激怒して『この銀杏大樹はおれの命、1000年の昔より幾多の風雨や大災害にも遭い、それに耐え抜いてきたこの大銀杏を、今になって伐り倒すとは…、伐るならこの王樹を斬ってからにせよ』と猛烈に反発、百年来の事跡をもとに理路整然と反論し、学者の意見も引用してただ一人で反対運動に東奔西走、ついに当時の建設大臣まで動かして伐採中止となった。

◆父の句日記の中には、8月12日問題の土手の大銀杏伐採の件、先輩諸氏のご尽力にて取りやめとなり、誠に欣快なり [大銀杏 叩いてやれば 秋の声] とだけ簡明に記されていた。 ◆これを期として、県の天然記念物の指定も受け、多くの人々の熱望を入れて、大銀杏樹の下に句碑が建立され、皆さんから祝福を受け大満足であった。

乳瘤(ちこぶ)垂れるる 銀杏大樹や 初明り

この先達の略歴を下記に、敬意を持って追載させていただきます。(赤か毛)

大銀杏カラー写真<撮影:K.B.>2007年3月※2枚とも

その他の画像:平成13年カレンダーより転載


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コメント 12

薩摩飛脚

木屋瀬名物の大銀杏、やっぱよかですねーっ!
でも、こうまじまじと見るのは初めてです。
今は通りやすくなりましたが、以前は片側通行で、どちらかが停止して対向車がなくなるのを待っていましたので、運転に集中して見る
余裕がなかったものですから...

この大銀杏も、やはり伐採の危機に立たされていたのですね。
阿部王樹さんはすごい方ですね。心か尊敬いたします。

しかし、むこの大銀杏はまだまだ元気がいいですね。
飛脚の住む町にも土手に大銀杏が二本そびえているのですが、
地下の水脈が枯れてきているらしく、もう枯れてしまう寸前です。
そこを通るたびに「がんばれ!」と励ましたくなります。
by 薩摩飛脚 (2007-03-17 18:52) 

二つ目草

私も初めてここを通った時はまだ交互通行でした。
道路の真ん中に大木があって、運転にちょっと戸惑いましたが、
風格のある姿にただならぬ存在感を感じました。

この木を守るために奔走した人がいたというのは知りませんでした。
今度通る時にはまた違った感慨を持って木を見上げることになりそうです。
by 二つ目草 (2007-03-18 21:52) 

赤か毛

飛脚さん、薩摩への飛脚も命がけだったと言うことですが、
「この樹をを伐るなら、まずこの王樹を伐ってからにせい!」
という一言、なかなか言えませんね!
しかも、たった一人での運動、本当に頭が下がります。
by 赤か毛 (2007-03-19 13:14) 

赤か毛

二つ目草さん、あの当時不便だったけれど、事故は少なかったようですね。
かえってみんな気をつけたのか、大銀杏が守ってくれたのか…
おっしゃるように「ただならぬ存在感」
まさにその通りです。威厳そのものですね!

一方で、梟をその枝に乗せ、「星を抱き さむがっている 大銀杏」
という気の優しさと寂しがりやを、大樹の中に見出している王樹さん自身の
優しい眼差しと、気性の激しさとを対比させて、川筋を感じてしまいます。
by 赤か毛 (2007-03-19 13:23) 

ゴン太

人を動かすのは人ですが、たった一人でも反対運動をしたというパワーはすごいものですね。地元の“大切なものを守る”という気持ちは持ちたいものですね。
by ゴン太 (2007-03-20 02:05) 

赤か毛

ゴン太さん!ようこそ洞海湾通信へ来てくださいました。
ほんとにすごいパワーです。
まず、一人で運動をしたこと、それから、6月に初めて8月には保存を勝ち得たこと、そして、おまけにその後この大銀杏が「県の天然記念物」に指定されたこと。
まさに、3拍子そろっていますよね。
あきれるほどのパワーです。筑豊ではこういう人のことを「ばけもんやが!」と言って賞賛します。
by 赤か毛 (2007-03-20 07:28) 

wanwanmaru

こんばんは。どうもご無沙汰しています。
ようやく試験も終わってホッとしているところです。

この大銀杏、もしかすると木屋瀬にあるやつでしょうか。
私も2年ほど前見に行きましたが、道路の真ん中で堂々と
していますよね。

じっくりと写真を撮りたかったのですが、ひっきりなしに
車が通るのであきらめてしまいましたが、この木にそんな
エピソードがあったのですね。

何かもう一度見に行きたくなりました。
by wanwanmaru (2007-03-20 23:26) 

赤か毛

wanwanmaruさん!!
お元気そうで何よりです。試験勉強でやつれているのではないかと心配していました。ゆっくり、静養してまたブログにいそしんでください。

ご推察の通り、これは木屋瀬の大銀杏です。
私も昔から気になっていた木でしたが、ひょんなことから
知人が王樹さんの縁者とお友達で、このことを知りました。
私も今は遠くに住んでいますので、帰省したら是非見に行きたいと思います。

また、wanwanmaruさんの記事楽しみにしていますよ!
コメント有難うございましたm(_._)m
by 赤か毛 (2007-03-21 00:34) 

jack_s

いつも素晴らしい写真とみなさんの書き込みで、遠くにいても臨場感たっぷりに、故郷を感じています。ありがとうございます。信州の高原にも、いま雨が降っています。冬との決別のように。残雪もかなり無くなることでしょう。九州、信州、日本で、現代で、自慢げに、州を名乗る場に住み続ける私は、幸せ者です。宜しくお願いします。
by jack_s (2007-03-25 01:05) 

赤か毛

jack_sさん!!
お久しぶりです。いつもコメント楽しみにしています。
信州の春は遅い分、感慨もひとしおかと思いますが…
なるほど、九州と信州、暑い国と寒い国も「州」つながりで共通点がありましたね。
さしずめ「ステート・ネットワーク」というところでしょうか!?
今後なにか共通のテーマを見つけて、情報交換ということが出来るといいですね。こちらこそ、宜しくお願いします。
by 赤か毛 (2007-03-25 11:48) 

NO NAME

60年以上も前、ばあさんの背中で聞いた言葉をふと思い出し
検索しました。
    トロスコトート
このサイトがヒット。
びっくりした。その後、この音を聞いたことも、
知る人に出会ったこともありませんでしたから。
by NO NAME (2008-08-19 14:23) 

赤か毛

NO NAMEさん、おはようございます。
ようこそ遠賀・洞海湾通信へいらっしゃいました!
ひとつの言葉でこのような出会いが生まれる、とても嬉しいことです。
NO NAMEさんは筑豊のご出身ですか?
私もこの言葉は、祖母が遠い昔使っていたようなかすかな記憶しかありませんでした。
筑豊の言葉には、えもいわれぬ独特な言い回し、ニュアンスがあって
他の言葉に置き換えるのが難しいと思います。
もし、ご興味がおありでしたら、この本をお薦めします。↓
http://www.geocities.jp/book_of_tikuho/02hogen.htm
このサイトにうまく飛ばない場合は、「みそんちょ」で検索してみてください。
筑豊の本・筑豊の方言集「みそんちょ」がヒットします。
ここには、宮田の福田さんが出版されている、筑豊に関する本がたくさんあり楽しめます。
ちなみに、「みそんちょ」で引いてみますと、「とろすけとうこう」となっていました。
コメントありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。

by 赤か毛 (2008-08-20 06:15) 

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